コマーシャルサウンド ~専門オペレータが常駐していることがほとんどない、簡単な操作のシステムについて~
コマーシャルサウンドという言葉を聞いたことがありますか?
海外で発刊されている音響専門誌をご覧になっている方々はよく目にされていると思いますが、(Commercial) 商業の (Sound) 音 と書くと
「商業施設に設置されている音響設備(から出ている音)かなぁ」
となんとなく想像できるのではないでしょうか。欧米では、コマーシャルサウンドという言葉から想像できる意味よりやや広義で、ホテルや百貨店、飲食店等の商業施設はもちろんのこと、学校の講堂、教室、会議室、駅や空港等の拡声設備を指してこう呼んでいるようです。
これらの施設には、専門のオペレータが常駐していることはほとんどない為、誰にでもわかりやすい極力簡単な操作で運用できるようなシステムが要求されます。しかし、この “簡単な操作のシステム” の部分が、大きな誤解を招いている事例が多々見受けられます。 “簡単な操作のシステム” とは、機器の数が少ないので操作する箇所が少ないシステムではなく、扱い易い空間環境が整ってかつ、シンプルな操作体系で煩雑な作業をこなす機器が導入されているシステムなのです。
“簡単な操作のシステム” を一言でいうと、施主、使用者の要望を適え、違和感なく使用できるシステムである、と言えるでしょう。このシステムを実現させるには、施工前の段階から、壁、床、天井等のマテリアルや機器の設置位置のシミュレーションを行って適切な機材を選択し、完成後には、機器の設定、調整という作業が必要になります。これらの作業を行わなければ、運用開始後の “音がよく聞こえない!” や “すぐにハウリングして使い物にならん!” 等の様々なトラブルが発生し、結果として、とても使いづらいシステムになってしまう現実が待ち受けて・・・
さて、日本でのコマーシャルサウンド(と欧米で呼ばれている分野)の現状はどうでしょう。
“音なんて出てればいいんだよ” 的な解釈で予算が削られ、必要であるはずの機材を入れられず “音が聞こえない” という類のトラブルに悩まされていることが多いのではないでしょうか? これは、施主にとっても施工者にとっても決していい状況ではないですよね。
海外(主に欧米)に目を向けてみると、コマーシャルサウンドは、音響関連市場のなかでは最大の市場であり、それを専門とする数多くのコンサルタントが存在し活躍しています。また、海外の多くの音響機器メーカーが、コマーシャルサウンドに適した製品を数多く発売しているところからもその市場の大きさが伺えます。という事は、海外では音というものを、その施設(空間)を構成する重要な要素のひとつであると考えているということが自ずと見て取れます。
理解はしていても軽んじられている日本でのコマーシャルサウンドという分野を、海外で実践されているような内容で確立すること、それを施主に納得させるだけの知識と技能の向上を図る事がこれからの我々の課題(使命?)であると考えています。