ベルリン・オリンピアシュタディオン&ミュンヘン・アリアンツ・アレナに行って来ましたレポ(浪花克治記)(H18.06.30)
ジーコ・ジャパンのトライアルも残念な結果で終わり、次のワールドカップに向けて新しい総監督(誰がなる?オシムさん?)の元、次世代への期待とエールをこめて、今回見学した二つのアレナを紹介したい。実は、すでにプレワールドカップと銘打っての見学会に参加したんですがなかなかタイミングが合わなくて書きそびれてました。すいません。以下の施設概要などは、フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』を参照してください。 まず、ベルリンのオリンピアシュタディオン。 ここでは試合の観戦と、使用していないときのOFFタイム(空席の見学の両方)の見学が出来た。本スタジアムは1934年のベルリンオリンピックに建設されそれ以来幾度の改修を経て昨年に観覧席に屋根をかけるなどワールドカップに向けての大改修がおこなわれたのである。音響設備もこの一環として、大型のホーンスピーカシステム(約9台のラインアレーシステム)を一組として19基計171台設置して、本大会のメイン会場にふさわしい内容のものに更新されている。
ベルリン・オリンピアシュタディオン外観
ベルリン・オリンピアシュタディオン
ここで注目すべきは所要拡声・再声音レベルである。要求性能では観覧席の場所によって101dB(A)~107dB(A)と細かく規定されている点と、一般の球技場、野球場の要求性能より約10dB音圧レベルが大きいことの二点である。観客席での拡声・再生音の所要平均音圧レベルの104~105dB(A)については1998年にパリで開催されたワールドカップのメインスタジアムでのそれとほぼ等しい。この大きすぎるとも思える最大再生・拡声音量は暴徒に対して最初に出来る制止・抑止プログラム用であると聞く。警備員が駆けつけるまで音声で暴徒の行動を抑制するとのこと。どれくらいの効果があるかは推し量れないが、いきなりスピーカで、それも大音量で行動制止の罵声?が突き刺さるのである。経験がないのでなんともいいがたいがいわれたほうはきっと"ギョッとする"に違いない。観客席には3×19(+アンダーバルコニー席も19ブロックか)のブロックに細分して放送される。また、エアモニター等音声と映像による暴動の起こりはじめを捉えるシステムも備わっているとのこと、今回はそのシステムは拝見できなかったが以前訪れたことのあるパリのメインスタジアムでは暴動監視聴・音声による抑制システムがメインであり、このための出力制御、エアモニタリングシステムにシステムの予算をほとんどつぎ込んでいる。 音響調整卓はデジタル卓ではあるが日本では待ちのスタジオに設置されている程度のものの高級バージョン程度である。マイクとオンガク、他特定機器のソースを選択して送出できればいいだけという、割り切りがある。出力制御についてはよく考えられた必要かつ十分で、それ以下でもそれ以上のものではないことを感じさせられたのである。この割り切り方と徹底したその実現方法に敬意を表したい。
しかし、このベルリンのスタジアム、改修に伴ってか、青天の霹靂とも言うべき事態が表面化していた。拡声・再生音や歓声、イベントの騒音によるクレームが近くの(とはいっても数百メートル離れている)マンションから出たのである。本来野外型のスタジアムであることから観客席椅子は強化プラスチックである。したがって、残響は空間規模に対して長めであり、"ざんきょうおんノえねるぎー"がいかにもタマっているという感じが付きまとう(拡声・再生音もそれなりであったが、明瞭さが損なわれているというほどでもないところはさすがというべきか)。加えて、観覧席の屋根も外壁最高部との隙間は、サッカー競技開催の宿命から、大きく?開いている。このために騒音が減衰しないで、漏れる。この箇所の処理(吸音)はどういうわけか、パリのスタジアムに見られるような観覧席屋根内側下面の吸音処理が、施されていない。また、外観の歴史的意匠を気にしてか観覧席屋根がオーバーハングしていない。など、先ほど感心したサウンドシステムとは裏腹な感じが否めない。かくして、著名な建築家が立てたそのマンション住人からのブーイングにさらされてしまったのである。まことに残念なことである。
クレームの出たマンション
スピーカクラスタ
そしてミュンヘンのアリアンツ・アレナ。
こちらは最近完成したスタジアムである。サッカーでの使用がメインだけあって、近代的・未来を予感させるに十分な個性を発揮している。 一番の特徴は、そのETFT膜構造による外観意匠とその内部から膜に着色するの色とりどりの演出照明も手伝ってか強烈な個性を周囲に発散・発信していることであろう。音響での特徴はエンクローズドされた感の強い観客席用の屋根、観客席の椅子は何とクロス張り。天然繊維のものではないが十分に吸音効果のある素材であることが一目でそれと判る仕上げである。ベルリンのスタジアムに比べて400mトラックがない分フィールド、ピッチがコンパクト、かつ客席床勾配も最大35度と大きいせいもあり残響抑制効果を確認でき、ベルリンに比べて明らかに静粛感を実感できた。数値で示されるよりもはっきり認識できる。したがって、拡声再声音の明瞭さも雲泥の違いである、ベルリンとは。時代の差を感じてしまった。
ミュンヘン アリアンツ・アレナ外観
ミュンヘン アリアンツ・アレナ
ちなみに、本アレナのようにアメリカで言うアリーナとはちょっとニュアンスが違うようである。アメリカのアリーナは別名ドームとも言われるように完全に屋根が閉鎖した空間をいうのに対して今回のようにドイツ(やヨーロッパ諸国もなのかはわからないけれども)では観客席用に設置した屋根があるにはあるがフィールド上部が開口となっている空間でもアリーナと呼ぶのである。ずい分と様子が違うようである。
アリアンツ・アレナ(Allianz Arena)は、ドイツ・ミュンヘンにあるサッカー専用スタジアム。スイスの建築家ヘルツォーク&ド・ムーロンの作品。なお「アリアンツ」はドイツ最大の保険会社の名前である。最寄駅は地下鉄U6線の「フレットマニング(Frottmaning)」駅。
2006年・ドイツW杯の試合会場、2004年/2005年シーズンまでオリンピアシュタディオンをホームスタジアムとしていたドイツ・サッカー・ブンデスリーガ・バイエルン・ミュンヘン1860ミュンヘンのホームスタジアムとして使用される。約370億円を投じて完成したアリアンツ・アレナの繭のような外観は半透明の特殊フィルムETFE(旭硝子製)で覆われておりスタジアム内から景色を眺めることができ、試合開催日はチームカラーであるバイエルン・ミュンヘンの赤、1860ミュンヘンの青、ドイツ代表戦などでは白にそれぞれ発光する。収容人員は6万6000人。
ドイツW杯では、数試合の開催が決定されている。なお、FIFA(国際サッカー連盟)の規定では、FIFAが主催する国際大会においては、FIFAが認定した公式パートナー・サプライヤー以外の企業のスタジアムの広告や命名権(ネーミング・ライツ)によるスタジアムの企業名露出を禁止していることから、ドイツW杯期間中は「FIFAワールドカップスタジアム・ミュンヘン」として開催され、W杯の公式記録や報道で「アリアンツ・アレナ」の名称がでることは無い。
スピーカクラスタ
サウンドシステムの紹介は以下のホームページへ http://www.eviaudio.co.jp/
● ベルリン:オリンピックスタジアム(77,000席) Pシリーズ・リモートアンプ:EV P900RTx2, EV P1200RLx40, EV P3000RLx45 DSPマトリクス・シグナルプロセッシング:EV N8000 NetMax スピーカ:EV XLC127+Custom x171, DYNACORD V24-Customx9 ボイスアラームシステム:DYNACORD PROMATRIX
● ミュンヘン:アリアンツ・アリーナ(69,000席) Pシリーズ・リモートアンプ:EV P900RTx4, EV P1200RLx14, EV P3000RLx53 DSPマトリクス・シグナルプロセッシング:EV N8000 NetMaxx21 ミキシングコンソール:MIDAS Venice240x1 スピーカ:EV Xf-Customx82, EV Xi-2181-Customx72, EV EVID6.2Tx96 ワイヤレスマイク:EV RE-1 ボイスアラームシステム:DYNACORD PROMATRIX
(浪花克治記)