ノイズキャンセルヘッドホン
ノイズキャンセルヘッドホンに関する質問がありました。
Q:位相を反転させた音を合わせると音が小さくなると言う現象があるようですが、それを利用したヘッドフォンがあるときいています。受験生とか騒音が気になる人が使っているようです。これはなにもヘッドフォンを使わなくても(たとえば代わりにスピーカを使う等で)騒音が気にならなくなるようなシステムってあるのでしょうか?防音工事とかで外部の音を遮断するのではなく、音響的に消すと言うことは可能なんでしょうか。
A:ヘッドフォン式のノイズキャンセルヘッドフォンはBOSE、A・テクニカ、FOSTEXなどからでています。SONYもあったかな?
ヘッドフォンの外側にマイクを仕込み、このマイクで外部の騒音を収音します。
ヘッドフォンの内側に侵入してきた外部騒音の"ピーク成分"と逆位相の音をヘッドフォンのスピーカから音楽や落語の音にミックスして再生すれば、外部騒音のピークとその近傍の周波数成分を減衰させられるという方式です。
外部騒音はヘッドフォンの遮音量に逆位相による減衰分が加わりますので、ドラマティックに遮断効果が感じられるという方法です。
この逆位相成分で目的以外の音を遮断(マスク)する方式は、実は結構古くから使われています。
・空調ダクト内の消音用(アクティブサイレンサ)
・航空機のコクピット内の会話を明瞭度良く記録しなければならないレコーダのブラックボックスなど
・高級自家用車のドライバーやVIP席の音環境改善装置
・防音塀突端に位相キャンセル用音源スピーカを列状に配置して塀の仮想高さを高くする。
(効果対費用の点で普及せず⇒開放空間であることと通過音に対しておこなっているので効果が少ない)
などです。
ここですでにお気づきかと思いますが、上記のどの例も、効果の及ぶ場所は極めて限定されている範囲内だということです。オマケに閉ざされた空間です。(塀の例は例外的)
逆位相といえども音を発生させているわけですから目的以外の場所では当初より大きくなります。
統計的には同じ音量をだせば当初の3dB以上~6dB未満が増加分と見込めます。
したがって、広範囲なエリアに本逆位相音の打消し技術は応用できないことになります。
また、これらを製品にするには緻密な演算によるディレイ時間と周波数特性の管理が必要で、これを実現するにはデジタル音声処理技術の発展とコストの低下を待たねばなりませんでした。
ヘッドフォン式のものが現在急に注目されてきたのはこの点が商い的に解決してきたからにほかなりません。
同じようで、逆の発想から、特定の場所だけに音を聴かせる技術も発達しています。
スタンドアローン機に代表される個別展示ブース用やサッカー場での観客が興奮し暴走化する前の制止アナウンス(パリの8万人収容のスタジアム等)です。
そこで事務所でTRY!!ノイズキャンセルヘッドホン・・・BOSE 「QuietComfort2」
「耳が暖か~い」といいたくなるくらいのホールド感がある、BOSEのノイズキャンセルヘッドホン「QuietComfort2」を試しました。 実は、ノイズキャンセルヘッドホンなるものの効果をあまり期待していませんでした・・・。しかし、しかし・・・。
所内でこのヘッドホンを装着したところ、うるさいことで有名な我が事務所の空調騒音がなんと静かになるではありませんか。まるで静かな高級事務所に早変わりしたようでした(言いすぎかな?!)!スイッチを入れた時に多少気圧が変化するような感覚はありましたが、ON/OFFすることで、低音成分のキャンセリングの様子がよくわかりました。
このヘッドホンを、某美術大学の学生さんにも講義中に試聴してもらいました。皆さん目が点になるほどその効果にビックリしながら楽しんでいたとか。講師の声はキャンセリングされないでしょうねぇ・・・。