音響設計の仕事を通しての会館職員のご活躍とご苦労についての感想【Part5】開館準備期間【Part6】オープニング(浪花克治記)

音響設計の仕事を通しての会館職員のご活躍とご苦労についての感想

日常の設計管理コンサルタント業務を通じて仕事の流れにそって日ごろ感じることを披露したいと思います。
(特に会館職員との関わりについて)

5. 開館準備期間

この時期がもっとも会館担当者,特に舞台技術者にとって過酷な時期はないんじゃないだろうか。準備期間が半年以上もあるのなら習熟期間も、設備,機器の不具合にも十分対応でき、100%とは行かないまでも、ある程度システムの状態を把握した上で開館に臨むことができるというものである。私の知る限りこの準備期間の少なさによる困ぱいと開館後のオープニングの催し物への対応の多忙さによる心労で失語症になった音響技術者を知っている。個人差との見方もあるであろうが、胃痛になった人は結構知っているがこのような事態に遭遇したことは未だかつてなかったことである。これを誰に責めることもできない状況にあることのほうが痛々しいのである。

6. オープニング

オープニングで感じることはやはり慣れない設備を使っていることによる催し物に適した調整と打ち合わせ,さらにハプニングに対する対応が不充分になってしまう点であろう。特にクラシックのコンサートにおけるアナウンスの音質と音量にこのことを感じる場合が多いのである。一瞬のアナウンスであるがその後に演奏されるクラシックコンサートの雰囲気を台無しといえば大げさかもしれないが雰囲気をそがれてしまうのも事実である。また、聴衆の年代・趣味・趣向も加味しなくてははならないだろう。どうして音量が大きくなったか,音質がロック、ポップス調のキンキンしたものになったか等と聴いてみるとアナウンサーとMCマイクの距離や話し方など事前のリハーサルには無かった緊張と改善の気持ちから,違う話し方、違う距離・位置関係で話してしまう、あるいは明瞭さを気にするあまりキツイ音質になってしまっていることなど、オープニングセレモニー,イベント,コンサートなどに参加してみると単に設計担当招待者として聴衆として聴いているのとは比べ物にならない裏方さんの努力を知ることができる。これにはロック,ポップス,歌謡曲などのSRシステムを使用するイベントや演劇などの世界からいきなりクラシックのコンサートホールでのスピーチの拡声,アナウンスなどまったく経験しない、世界の違う環境でのPA,のあり方など課題も多いが一方的な判断だけではなく、こうした裏方さんの苦労をわかった上でわれわれも対応し協力すべきと感じている。(浪花克治記)

Part7に続く。

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