音響設計の仕事を通しての会館職員のご活躍とご苦労についての感想【Part1】計画、基本設計時点【Part2】実施設計時点(浪花克治記)

音響設計の仕事を通しての会館職員のご活躍とご苦労についての感想

日常の設計管理コンサルタント業務を通じて仕事の流れにそって日ごろ感じることを披露したいと思います。
(特に会館職員との関わりについて)

1. 計画、基本設計時点

この時点では開館建設のための有識者又は経験者に意見を聴取してどんな性格のホール・劇場にすべきか、設計者はどういう人が適当かを検討することに始まり、設計者が決まった時点ではお互いに意見を交換し、使いやすく、かつ存在感のある建物、ホール・劇場に仕上げていこうというのがその本来の目的である。
これを通常、国,県,市区町村では建設準備あるいは建設委員会という組織を作ってこの目的に添うようなメンバーで構成されていくのである。

ここでの構成員は一般的に、専門委員として建築設計関係者、舞台装置、音響、舞台照明の経験者、重鎮と呼ばれている人たちが参加する例が多い。ここで敢えて音響としたのは建築音響の先生が登場するのがほとんどで、舞台音響経験者ではないことが多いのである。したがって、音響というのは純技術的な音響学者と舞台で実際に音響技術者として活躍している中心的な人物、これは決して重鎮と呼ばれている人と同義ではない。現在進行形の人が本来なのであるが、これらの方々は日常の業務が非常に多忙を極める方たちでもあるわけである。

したがって、いちいち音響関係者以外の、また、舞台関係者以外の日常業務に普段かかわっていない人たちに舞台音響はかくあるべきと説明しにくいのも事実である。ついつい普段の関係者用語で伝えてしまうこともしばしばである。これらがネックになっていることを感じることが多い。周りの舞台関係者以外のそれも建設関係ではホール建設では本来脇役であるはずの方々が、実は建築というハードを造っていく上では専門家であるが、怪訝な感情を抱く結果、音響といえば音響学関係者にすりかわってしまっていることも十分考えられるのである。

これらの点からいろいろな音響関係協会、私的な集まりである~会などの地道な活動をされていることを、そして、われわれもどんどん参加し、育てて人材を世に紹介していくことこそ最初の一歩を軌道に乗せるひとつの道、方法とも考えている。またそれらの集まりがその受け皿になっていくようにも協力をしていくべきなのではないだろうか。

メーカー、施工者の皆さんもこの点についてはその膨大で貴重な情報こそ現場の音響担当者また、施主サイドに伝えることも重要なことと考えられる.これによってホール建設のスタート時点から必要十分な予算も確保されることが予測され市場が活性化することも考えられる。ハードの情報だけでは大変もったいないと感じているのはわれわれだけであろうか。

2. 実施設計時点

この実施設計時点ではハードのコンサルタントいわゆる経験者による主に使われ方を反映したシステムの適正化が主目的である。建築設計事務所に対する技術協力が多いが施主サイドでは知恵袋である。施主側は専門的な舞台知識を持たないための判定基準の尺度として考えている場合が多い。
ここで、両者の意見の対立があったときは少々厄介である。両者が師弟関係の場合はまだ良いとして、経験と立場の異なる場合は両者の間に入って調停する役割を担うセクション、立場の人が必要になってくる。私も一度ならずもそれを経験したことがあるが二度とやりたくないというのが正直なところである。設計どころではなくなるのである。
また,同地域において2件目の会館建設では既設会館の技術者が実際の使用操作からの意見要望を施主側の正式な意見として設計側に提示される場合がある。これもユーザーサイドの意見としてそのまま採用して設計すれば良いと考えられるが、一概にはそうとは言いきれない。広範囲な地域の各地区に同じような性格のホールを建設するならともかく、同地域に性格の異なったホールを建設するな場合は注意が必要である。多目的ホールとコンサートホール、劇場、会議場兼ホール等といった場合である。使用目的に最適なシステムとは何かをひざを交えて話し合う機会こそが大事である。 (浪花克治記)

Part3に続く。

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