新相馬市民会館が9月に完成しました。

震災で建設が危惧された新相馬市民会館の建設が9月に完成しました。我が事務所は実施設計の見直し時点から音響コンサルタント業務を行い音響検査測定まで実施しました。その落成記念の演奏会が10月の10日に「仙台フィルハーモニー」と「市民会館のオープンを祝う合唱団」のコラボレーションの演奏会が行われました。この演奏会はいわゆる普通の杮落し公演の一環として行われる演奏会と思って参加しました。しかしホールに来られている観客の笑顔を見るにつけ、これはただの落成記念公演・演奏会ではないと感じされられました。

震災復興の渦中にあってもなおその建設に意欲をたぎらせ、先ずは市民会館のホールを作らねば、との思いがひしひしとつたわってきます。この熱い息吹がみなぎっている光景を目の当たりにすると熱いものを感じずにはおれませんでした。筆を執らずにはいられないほど興奮した演奏会でした。これを皆さんにお伝えせねば何をニュースにするべきや!ですね。この演奏会のホットな情報です。

演奏会前半のベートーベン交響曲第7番ではまだおっかなびっくりな演奏でしたが、後半の西本幸弘さん(仙台フィルコンサートマスター)のヴァイオリンソロフィーチャーになってがぜんグッド・アンサンブルになって低音は朗々と高音はキラキラとした気持ちのいい音に。

これは舞台反射板の正面と側壁にWENGERのDIVAを提案し採用したことによって、本ホールの屋根が舟底型であるために通常の舞台反射板を設置すると縦軸回転型となり袖に柱が出現するなど舞台袖が狭く複雑な構造となることの不都合を回避できたこと。と、そのWengerの反射板材が良くダンプされ反射音に癖のない音が得られていること、さらに反射板形状と材料がWengerのそれと異なる通常の天井格納型天井反射板の組み合わせで反射音の癖をさらにとり除くことに貢献している大きな要因となっていると思われます。加えて、ホールの内装や床の形状や吸音・反射材を苦労して検討配置したおかげでしょう、きっと。

更に指揮者の岩村さんが西本さんへのインタビューでのこと「このホールはいいホールですね」と切り出したところ、西本さんの感想の中で、「このホールはとってもいい響き!」とみんなの前で言ってくれたのがとっても印象的・感激ものでした。
この言葉だけでこれまでの苦労や雑念がいっぺんに吹っ飛んでしまいました。

さて後半!佳境に入ります。

即席臨時編成、とはいえ上手でした「市民会館のオープンを祝う合唱団」と仙台フィルのコラボがモーツァルトK.618、最後にヘンデルの「ハレルヤ」で絶好調に!
ついにというか、
アンコールでは、仙台フィルがなんと「相馬盆歌(太鼓付)」観客席も当然加わって、全員で大合唱。
そして、
「花は咲く」の大大合唱で幕となりました。
その時の観客の様子はというと、
私の席(14-5)の隣側のおばあちゃんとおじいちゃんが大きな声で「相馬盆歌」と「花は咲く」を
目一杯、目には涙で歌っておられました。
他の皆さんはと思い、周りを見渡せば大同小異。
みなさん大合唱、手拍子バンバン、目はうるうる。
ほんとうに待ち焦がれていたホールなんだなと。
音楽が本当に好きな方々の街だということを実感しました。本当に音楽が人の心を明るく澄んだ気持ちにしてくれていることに熱いものを感じずにはおられませんでした。こんな経験は初めてです。
こんなにいい街の、こんなにいいホールの建設に携われたことに誇りを持ちたいと思いました。
関係の皆様ありがとうございました。
先ずは感激と感謝のご報告でした。

ホールの概略諸元です。

室容積(V):≒8,000㎥、室表面積(S):≒3,300㎡、V/S:≒2.4m、

収容人員(N):943名、V/N≒8.5㎥/人

残響時間(空席時):≒1.6秒、(満席時計算値):約1.45秒

設計は株式会社綜企画設計、施工は株式会社フジタ、東洋熱工業株式会社、株式会社ユアテック、舞台設備は株式会社松村電機製作所、三精輸送機株式会社、株式会社システムエンジニアリング     (浪花克治 記)