モニタースピーカを映写用スピーカに使ったら・・・(H20.4)

某中規模プレゼンテーション・試写室(W:7m×D:15m×H:5m)でスクリーンサイズは250インチ)で映写設備の入替、改修時のことである。調整室用モニタースピーカがたまたま入っている本試写室でチューニングをおこなうことになった。当初はどうしたものかとおもっていたのは映写用のスピーカでないと映画などのコンテンツの音声はうまく再現できないのではないかと危惧したのである。ところが、である。意外や意外、本室程度の大きさの室などでは結構映画にも使えそうでもある(積極的に使いましょうということではないのですが)。以下に少々の考察を。

●システムの大きさと低音再生限界について  映画や拡声用・SR用スピーカは大音量対応とするため小型フルレンジシステムの低域側は比較的高い周波数から低音域カットがなされているのが普通で、低音域用にサブウーハを追加するのが前提となっているものである。また、コストを考慮した廉価なスピーカシステムではフルレンジスピーカを大型ボックスとし、低音の再生周波数を低く設定するなどの方法をとる。いずれの方法でもシステムが大型になり中型以下の試写室などではこれらの大型スピーカは採用しにくい。特に今回のように改修であればなおのことである。   今回の中型試写室も然りで、スピーカが収まらないことがネックとなり拡声用スピーカとしては小型であるもののモニタースピーカとしては標準の大きさ、で低音の再生周波数も低くとれることが採用の理由のひとつとなっているようである。で、よほどの大音量再生でもない限りこの室では比較的SR用では小型に見える中型(標準の大きさ)モニタースピーカが映画の低音の再現には十二分ではないにしろプレゼンテーション用コンテンツの低音再生については十分である。

●高音域のクリアーさ  高音域の距離減衰による特性の変化をも心配したがよく設計されて予算も十分に投入されたツィータであれば浅くてもホーン形状さえ採っていれば(正規のホーン形状であればなおいいんでしょうが)10数m程度の距離での聴取には過不足を感じない。これは近い席との音質を比較して十分実用範囲という意味である。

●室内吸音処理など  室内装は天井:岩綿吸音板、床:タイルカーペット、壁:一部有孔吸音板/カットマスク兼用吸音カーテンで、適度な吸音性能を持たせている室となっている。映画のコンテンツを聞いていて特に違和感はなかった。特性は前の席、中央、後ろ席とも癖のない好ましい特性が得られていることを確認している。

●その他、経年変化の予測として  用途の違うスピーカで映画の音をよく再現できていると思った。また、お決まりの初期状態でのチューニングであるので経年変化(エージング)による低音の特性上昇分はあらかじめ予測できるためこの分を考慮して控えめな低音特性として調整チューニングを行っている。

▼お詫び :前号で富山市民プラザでの当方のスリムラインアレイスピーカ:SSLの使用例を今回号でご紹介、と予告させていただきました。が、すでに販社の㈱M&Nで本設置例がリーフレットで刊行されており蛇足になりますので今回は本スピーカの記事とさせていただきました。この資料もご請求いただければお送りいたします。

次号では、六本木の東京ミッドタウンでのスリムラインアレイのSSLスピーカ設置例をその考え方と合わせて次号で紹介させていただきます。(浪花 克治)